これまでのあらすじ
<前回>
探して タマゴ鳥② 全てはここから始まった~「タマゴ鳥A」を探しに故郷を訪ねました
タマゴ鳥Aを徹底検証
タマゴ鳥の起点であるタマゴ鳥Aに関しては、私は実際に目撃していません。
私が「タマゴ鳥A」の話を聞いたのは小学校3年生で、証言の責任能力があるかは微妙な年齢です。
子供は素直な心で真実を見抜く力を持っていますが、悪意のない大嘘を付くこともあります。目撃証言で子供達の悪ふざけの可能性は無かったのでしょうか?
ここでは、当時の懐かしい時代背景を紹介しながら、目撃証言の信憑性について報告します。
当時の子ども達の間で流行ったデマ情報
私が小学校時代にはデマ情報はよくありました。
(1)「高橋名人のファミコン16連射はボタンにバネが仕込んであり、警察に捕まった」
ファミコンブームの時代に、1秒間にボタンを16連射する神業を持った名人が登場します。
子供達の憧れだったプロ野球選手や、プロサッカー選手とは別に、プロゲーマーという新しいジャンルが生まれた瞬間です。
ハドソンの社員の高橋名人は、その後のファミコンブームの牽引役となりました。
当時の子供達は、1秒間に16連射(0.0625s/回)の凄さを理解できませんでしたが、高橋名人の16連射でスイカを爆裂させるデモストレーションに度肝を抜かれることになります。
しかし、昭和時代は「遊興のおっさんは信用できない」イメージが根強く残っており、素直に信じることが出来ない子供達も大勢いました。
子供達の間で「高橋名人の16連射はイカサマだった、警察に捕まった」デマ情報はあっというまに広まり真実として語られます。
「やっぱり嘘だったんだ」
「俺は最初から怪しいと思ってたけどな」
以降、高橋名人がイカサマを否定すると、デマを流した本人達から「実は高橋名人は警察の1日署長をしていただけだった」との消しネタが流れる様になりました。
<縁日「くじ引き屋台」の思い出>
昭和時代の子供達は、縁日で的屋の「うなぎ釣り」「型抜き」「くじ引き」のイカサマ被害に遭っていました。
当時のくじ引きの屋台は、数多くのファミコンソフトが景品に並び、1等はファミコン本体です。私の家は貧乏でファミコンを買ってもらえず、唯一の望みはこのくじ引きでした。
くじは1回200円程度で、50円~100円が主流の他の屋台よりも高く「りんご飴屋」、「タコせんべい」を買ってもお釣りがくる値段です。
おこずかいで貰った300円を握りしめて屋台で悩みます。意を決してくじを引くも、景品はおっさんが足元のダンボール箱から出してくる50円相当の「スマイルバッチ」「なめ猫プロマイド」、「ピロピロ笛」、「竹とんぼ」、「水鉄砲」しかありません。
友達と一緒に縁日の屋台を周っても、くじ引きをするとお小遣いがすぐに尽きるので、手持ちぶたさになりながら、ピロピロと笛を吹いて友達の後ろを歩くことが多かったですね。
年齢を重ねていくと、ファミコン本体の大当たりなど最初から無く、ファミコンソフトの景品は箱だけで中身が入っていないことに気付くのです。
昭和の子供はイカサマから、金銭感覚や資本主義の搾取原理を学んでいきました。
(2)「全身ピンクの服を着たピンクババァが子供を連れ去る」
昭和の頃はオカルトブームで、都市伝説も流行っていました。
都市伝説は、不条理な暴力が重要な要素です。
例えば、トイレで花子さんが「青色い紙いるか~(溺れる)赤い紙いるか~(怪我をする)」と、いきなり選択肢を迫ってきて、どれを選択しても不幸になる理不尽さが恐怖に拍車を掛けるのです。
都市伝説の多くの子供達の恐怖の対象となっていましたが、関西では子供達の恐怖に対するニュアンスが少し違いました。
関東でメジャーであった【口裂け女】【トイレの花子さん】は人気がなく、怪異の中に「おもろい」「なんでやねん」要素があった【ピンクババァ】が人気でした。
全身ピンクの服を着たババァを見て笑うと、鬼の形相で追っ掛けられて異世界に連れ去られるという都市伝説です。
”全身ピンクで笑かしに来てるのに、笑ったら連れ去られる”
ネタにツッコミしたのに不幸になる理不尽な状況が、関西の子供達を恐怖のどん底に突き落としたのです。
対処法も確立しており、
①「無視すれば、涙を流して去っていく」
⇒ネタをスルーされるのが一番悲しいから
②ピンクババァに襲われた時、「ピンクマン助けて」と叫ぶと全身ピンクの正義のヒーローが現れてピンクババァと戦って助けてくれる。
⇒「どっちもピンクやろ!」
⇒「ピンクマンの方がヤバい奴やんけ!」
当時は、5色のコスチュームを見に付けた戦隊シリーズ「ゴレンジャー」が大ヒットしており、変身ヒーロの中でピンクは女性のイメージでした。
「ピンクマンは変態ヒーローだよな」
「助けてもらっても対応に困るわ」
「ウザ絡みされるんちゃうか」
「警察に通報したら、2人共連れていかれるな」
「ピンクババァの方が話が通じるやろ。俺はピンクババァを応援するわ」
都市伝説はストーリーになっており、ピンクババァの話からのくだりはお約束です。子ども達の間でやり取りを楽しむ娯楽となっていました。
(3)「〇〇池にはカッパがいて、キュウリを投げた6年生が追っかけられた」
○○池とは、山の開拓工事で最近作られた貯め池で、カッパはいないとわかりきっています。
「そうそう、俺も○○池でザリガニ釣りしていたら、手が出てきて餌だけとられたわ」とネタを被せると、「嘘つき発見!アホが見る~ブタのケツ~」とツッコミを入れられる類のものです。
デマの特徴
- 2次、3次情報で、目撃者が特定できない
- 物語としてストーリーができている
- 聞く人によって内容が違う
- 姿、形が特定できない
デマ情報の一番の特徴は、ネタ元を誰も調べることが出来ないことです。
昭和の時代はSNSや携帯電話などのツールが無く、元ネタはテレビや漫画等の情報をイメージで膨らましたものです。
デマや都市伝説は民俗学の「おとぎ話」の要素を持っています。
①非日常の異世界から、一方的な「挑発」が起こる
②理不尽な選択を余儀なくされる「反応」の強制
③選択したものに対する「結果」と「恐怖」
この手の話は仲間同士で結束を強めるコミュニケーションツールとして活用されいました。
仲間同士て語り継がれている間に内容が濃くなっていき、その地域の特色や世相を色濃く反映して、洗練されたものに変異していきます。
救いようのない恐怖から、不幸を逃れる解決法、どんでん返し、実は~だったの話が作られていくのです。
優秀なストーリーは上級生から下級生へ語り継がれ、学校独自の文化を形成していきました
<例>
※「学校の七不思議」
※「トイレの花子さん」最近の花子さんは恐怖の対象ではなく、実は子供達の悩みを聞いてあげる心優しい妖怪に変異しています。
「タマゴ鳥A」の目撃証言が信憑性が高い理由
「タマゴ鳥A」の情報は、これらのデマや都市伝説とは大きく違います。
全てが直接見た1次情報
目撃者は実際に見たことだけを証言しています。
タマゴ鳥に追っかけられた、怪異な選択を迫られた、見た後に理不尽な出来事が起こった等の話を付けていません。
1人が言い出したことなら疑いますが、タマゴ鳥を目撃した子供は1人ではありません。
厳密にはクラスの男子3名、女子1名の計4人の複数人に目撃されています。
タマゴ鳥は初見の話で、類似の噂やデマはありませんでした。
目撃者した友人達は別グループであり、この手の話に全く乗ってこない女子が目撃したと言い出したので驚きました。
友達同士で話を合わせていた、悪戯の可能性は極めて低いものと思われます。
姿、形が一致している
遠足のバスの中で窓から電柱を見ていた友人が、何かを思い出したように「タマゴ鳥って見たことある?家の近くの電柱に止まっててビックリしたわ」と言い出しました。
聞いた男子2名も、「あ!それ治水場で俺も見たことがあるわ」「タマゴそのまんまんで、タマゴからクチバシが生えてた」と言い出す。
それを聞いていた女子が、「私もそれ見たことある!木の上に2羽いたよ」と告白した。複数羽いた場所が、治水場近くの共同墓地でお地蔵さんが並んである木であったので、「うわーめちゃ怖い、鳥肌立ったわ」とバスの中がざわつきはじめました。
「俺らそれしらんわー」
「どんな姿しとるねん。絵を描いてくれや」
目撃した友人達は、遠足の栞の裏に鉛筆で絵を書き出すと・・
描かれた「タマゴ鳥A」の異様な姿と、目撃者が同じ絵を描いていたことで、みんなが驚きバスの中は大騒ぎになったのです。
担任の教師も興味を示して「これ鳥なの?どうやって飛ぶのかな?先生は見たことないな」と不思議そうに絵を見つめていました。
「TV局にハガキ出そうよ!」
「川口浩が探してくれるよ」
私が興奮して言い出した事を覚えています。
発見場所や日時が特定されている
目撃者の友人達3名は、特定の場所で目撃しています。私の住んでいた地域は、集合団地で、賃貸物件のA棟、B棟、持ち家のハイツ、ファミリータウンに分かれていました。
目撃者の友達4名は全てB棟に住んでおり、家の窓から外を見た時に目撃しています。
タマゴ鳥の目撃範囲は100m内に密集している |
時期は不明ですが、学校から帰って家の中で1人でいる時で目撃時間は学校帰りの夕方で15時~18時の間であると推測できます。
最初に目撃証言をした友人は、同じ電柱で数回見ていました。
以上のことから、「タマゴ鳥A」の目撃証言は、誰かによって示唆されたものではなく、自発的なもので、誘導的な尋問や印象操作で歪められたものではないことがわかります。
目撃者同士の検証はバスの中で同時に行われており、子ども特有の同調圧力による記憶のすり替えが起こる時間はありませんでした。
また、すべての目撃者は「タマゴ鳥A」の全身の姿をとらえており、大きさ、姿、形が一致しています。個々で違うモノを誤認している可能性は低いものと思われます。
よって
⇒【目撃者達は同じモノを確実に見ていたと判断します】
タマゴ鳥Aは鳥なのか?
目撃者達は同じモノを確実に見ていたと判断できますが、それが鳥であったのかどうかは再検証しなければなりません。
そんな鳥は生物学的にありえないからです。
何故なら、描かれているタマゴ鳥Aは羽のある胴体や首、尻尾は見当りません。
クチバシのある頭部分から直に足が生えており、体長は80~100㎝程度と推測され、巨大な頭だけでカラスよりもはるかに大きいのです。
タマゴ鳥Aは単に幼い子供が描くデフォルメされた鳥の絵なら良いのですが、経験不足や精神的な未熟さから、鳥に見える人工物を誤認した可能性があります。
鳥ではない仮説を立て検証
1.電柱の上や、木の上に自力で存在できる飛翔体
2.形状はタマゴ型で、目玉や足、くちばし等の突起物がある
次回は、これらの条件を満たす類似の人工物が当時あったのか検証します。
また、郷土の民話を調査してタマゴ鳥に該当する文献が無かったかも調べます
次回はダイナミックに核心に迫ります |
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