転職した中途採用者に求められる資質は、「地頭の良さ」で間違いありません。
地頭が良くなければ、大手企業への転職を成功させることはできないでしょう。
地頭が良い人の定義とは
私は、中途採用者が初めて行うOJTの教育主任をしています。
OJT(On-the-Job Training)とは、職場での実務を通じて、業務に必要な知識やスキルを身につける育成手法のことです。半年間のOJTを経た後、中途採用者を適任の部署へ配属させるまでが、私の仕事になります。
OJTの教育主任になって間もない頃、配属後の部署から苦情がくることがありました。
「教育不十分なら、こっちに持ってくるな!」
「ミスマッチな人材だ、ちゃんと見極めてくれ!」
苦情の内容を詳しく聞いてみると、知識や技能の問題ではなく、「コミュケーションが取れていない」「やる気が見えない」「成長しない」等のヒューマンスキルに関する内容です。
私のOJTは、中途採用者に知識と技能を教えるのが目的で、躾やマナーを教える新人社員研修ではありません。課題をクリアすれば研修は修了させます。
「配属先での教育に問題はなかったのでしょうか?」
「資質の問題なら面接で判断してほしいところです」
とは言えない、悲しい中間管理職
「わかりました。ご期待に沿えるように対処させて頂きます」
「どのような人材が適任であったのでしょうか?」
「○○さんみたいな人だよ」
「○○さんみたいな人とは?」
「地頭の良い人だよ!」
「ー地頭良い ーわかりました」
地頭が良い人の定義は困難
地頭の良い人は、学力が高いとは限りません。学力は、学校で学んだ知識や技術の量を測るものですが、地頭は、それらの知識や技術をどのように活用できるかという能力を測るものです
前職の中小企業の町工場では聞かなかったフレーズであり、定義は曖昧です。私は当初、何を指しているのかさっぱり分かりませんでした。
研修で教育しようにも、私が意味を理解しなければなりません。
一般的に地頭の良い人とは、論理的思考力や発想力、コミュニケーション能力など、その人自身が持つ本来の基本的な能力が高い人のことを指すようですが、抽象的な言葉で人を判断することは困難です。
なぜなら、単に論理的な思考力、コミュニケーション能力、発想力が高い中途採用者は数多くいましたが、全てが活躍できたわけではなかったからです。
「意識高い系」中途採用者の取り扱いに悩んだ話
地頭が良い人の特徴
地頭の良い人とは、特出した知識・能力がある人ではなく、「会社が求める成果に結び付いた行動をどれだけできたか」=行動評価の高い人であるといえます。
「地頭のよい人」=「活躍した人」と定義するなら、その他大勢と一線を画していた行動がありました。
以下では。活躍できた中途採用者の具体例や行動を挙げて、中途採用者に求められる「地頭の良い人」の特徴を挙げていきましょう。
(1)仕事の全体像を把握し先読みができる
物事の全体像を総括的に把握することに長けており、「今、何をやっていて、次に何が必要になるのか?」を考えながら仕事をしています。
地頭の良い人は仕事の流れを理解しているので「次に何をしたらいいですか?」とは聞きません
「次はこれをしましょうか?」
「今これをやっておいたほうがいですね」
⇒具体的な行動を提案してきます。
(2)物事の法則性を見出す
【地頭が良い人】は物事に法則性を見出します
”一聞いたら十わかる” これが大きな特徴でした。
<例>
⇒「取り扱う製品の品種によって、仕様や設定を変更する」
⇒「多品種小ロットであり、パターンは500種類以上ある」
と説明してみます
× できない人の質問
「品種ごとの仕様リストを下さい」
できない人は全品種の細かい設定をノートに書いたり、資料を張り付けて覚えようとします。仕事する際は品種ごとに逐一資料見て確認していたので、時間が掛かる上にミスも多い。
⇒習熟度が遅く、同じことを何回も聞いてくるので手が掛かりました。
〇 地頭の良い人の質問
「仕様が違う理由を教えて下さい」
地頭が良い人は、本質を理解しようとするので「この用途、この条件、この成分があれば、この仕様になる」と法則を見出します。
上記の例題では、20種類の基本仕様を押さえて、後は例外のある製品だけをチェックすればよいと気付くのです。
⇒習熟度が早く、ミスも少ない
また、私が指導やアドバイスをしていると、地頭の良い人は口癖のように言うセリフがありました。
「あ、そういうことなんですね」
「なら、これもそうですね」
断片的な物事を総括的に捉え、本質を理解し法則を見出すので、ひとつの事から読み取る情報量が桁違いに多い。INPUTを増やして経験を積めば積む程、理解スピードは上がってきます。
⇒課題を短時間で対応することが可能になり、”物覚えが良い”と評価される
(3)物事の真相を見抜くことが早く、論理的な説明が出来る
トラブルが発生時の報告には大きな差が出ました。
× できない人の報告
「製品NGが発生しています」
トラブル時、できない人は事象の報告で終わることが多く、指示しようにも具体的なことは、こちらが調査・ヒアリングしなければいけません。
トラブル時は論理的に状況を説明できないと、誤った情報で現場を混乱させ、原因解明に時間が掛かったり、2次災害を引き起こします。
論理的に状況を説明できない人は永久に信用されません
⇒いつまで経っても1人前とは評価されない
〇 地頭の良い人の報告
結論: 「寸法NGです。設備異常の可能性があります」
理由: 「3次元測定器の実測値では基準に入っています」
具体例:「前回測定はOKで、設定値は変えていません」
結論: 「製品ではなく検知機に異常があると思われます」
地頭の良い人は、PREP法(Point、Reason、Example、Point)を用いてわかりやすく説明するだけではなく、原因の検証までしてくれるのです。
物事には、「その物事を成り立たせている背景」が存在します。
地頭の良い人は、広い視野でさまざまな角度から物事を見ており、表面的な情報だけでなく、その裏にある意味や意図を論理的に考えることが身についているのでしょう。
問題が発生しても、自ら仮説を立て、検証することで、物事の真相を見抜きます
⇒地頭の良い人は信用されて、仕事を任される人になります
柔軟な対応も可能
地頭の良い人は、固定観念にとらわれずに臨機応変な対応をすることもできます。
「±0.2mm寸法NGです」
「手順どおりに対処してください」
「今回は材質のバラツキが大きく大量に発生しています」
「規格は製造仕様書によるものですか?」
「いや、社内の安全基準で、組み立てた時の嵌め込み寸法だ」
「組み立て可能なら大丈夫ではないでしょうか?」
「寸法NGでも、組み立て可能で、完成品の品質に問題が無ければ良品でもいい。品質保証課と相談してOKが出ればかまわない」
(4)課題の意図を読み取り、最適な行動ができる
地頭の良い人は、自分が求められていることを汲み取り、最適な判断や行動をします。
<研修の風物詩>
「確実にやれ」⇒「早くしろ」
どっちもできません!
これはOJTで必ず発生する問題で、研修の風物詩となっています。
最初に目標の時間や品質を設定しているのに、いつまでも遅い、もしくは速くても不具合ばかりだす人がいます。
最初のうちは、安全、品質重視で遅くても確実性な作業を求めますが、1人で現場仕事をさせるにはスピードも必要不可欠な要素です。
研修でさせる作業は、仕事の根幹的な基本動作であり「できて当たり前」です。できないと他所での難しい仕事ができません。
作業研修を完了させるには「確実に速くできる」が目標なのです
×「できない人」は評価を変える
「遅いのは品質重視でやった結果です」
「早い事だけは評価してください」
研修期間では成果だけではなく、課題を正確に理解し、目標に向かってどのような取り組みをしたのかも評価対象になります。
研修者が評価を勝手に変えることはタブーです。
<更に酷くなると>
「私には向いてません。課題を変更して下さい」
「別の課題なら実力を発揮します」
<更に勘違いすると>
勝手に手順を減らしたり、ルールを変えて「これならできます」と提案してくる。
⇒研修の続行が不可能と判断され、研修期間で辞めることになります。
〇 地頭の良い人は方法を追求する
- 先輩社員の作業を観察してマネをする
- 先輩社員に積極的にしつこく質問する
- 資料やマニュアルを要求する
地頭の良い人は、「求められている姿」「成果の度合い」を正確に理解しており、できる方法を追求し課題をクリアしていきます。
また、「地頭の良い人」は良い意味で目標達成のために手段を選びません。人を上手に使います。
さらに「地頭の良い人は」評価は他人がするものと心得ており、客観的に自分を正しく評価しているので、以下の言葉は絶対に使いません。
「自分は頑張っています」
「これでも一生懸命やってます」
「自分はできているつもりです」
(5)人から情報を獲得する能力が高い
ネットで「地頭が良い人」を検索すると、コミュニケーション能力の高さが必須であると記述されていることが多いですが、これは的を得てはいません。口下手でも活躍する人もいます。
コミュニケーションの質が違うのです
⇒地頭の良い人は必要な情報を聞き出すコミュニケーション能力が高い
私は、町工場を巡っていたので、技術者の特徴はよく知っています。技術者にとって技術は命と同等であり、基本は教えないし教えたくない、技術は見て覚えろ、苦労して勉強しろの世界なのです。手順書やマニュアルは存在しますが、細かいポイントやコツは教えてもらうしかありません。
”質問すれば答えるが、どこまで教えるかは、相手の態度による”
これは、中小企業でも大手でも一緒です。
技術を教えてもらうことに感謝をしない人には、技術者は核心技術を絶対に教えない。
転職した当初は、年齢、経験に関わらず全員が先生であると思わなければなりません。
中途採用でコミュニケーションで失敗する人は、おしゃべり好きで、ON OFFをわきまえすに、仕事でも居丈高になり、慣れ慣れしく振舞うため、細かいアドバイスや忠告をしてもらえなくなります。
これを「ミスして覚えろ状態」と呼んでいます
ミス後でしか教えてもらえなくなると・・・
⇒大概はミスを連発するのに耐えれず辞めていきます。
<地頭の良い人は、人に取り入って情報を獲得するのが上手でした>
〇 地頭の良い人の会話術
- 「すごいですね、どうやっているんですか」
- 「私はこうしているんですが、上手くいかなくて」
- 「困っています。教えて下さい」
- 「ありがとうございます。やってみます」
1~4の流れで聞いてくる中途採用者はすごいと感じます。
まずは技術者の尊敬、次に自分で考えて努力していることを伝えて、その上で素直にできないことを認めて教えを乞う。教えてもらった後は、感謝の言葉と聞いたことをすぐにやる行動で相手を尊重している。
聞かれた方は気持ちよく教えることができて、「どうだった?上手くいけた?」と心配するため、実のあるコミュニケーションに繋がります。
この手順を間違えると技術者は教えてくれません。
わからないことは素直に相談する。アドバイスを受ければすぐに実行する。そんな謙虚な姿に、「何か困っていることは無いか?」と先輩技術者の方から技術を進んで教えてくるようになるのです。
<ある大手メーカーの中途採用の事例>
経験、資格、資質とも立派な人であり、前職では管理職をしていた。「教えてやる」「そんなことは知ってる」タイプだと思っていたが、腰の低い温和な人であり、20代の若手にも恥ずかしがらずに教えを乞う姿勢に驚いた。
「あなたほどの経験のある人なら、全て知ってるでしょうに」「いや、私もわからないことは沢山ありますよ。技術者として技術を教えてもらうことはどれだけ貴重なのか知っています。それに、前職の技術を皆さんに教える立場になった時、中途採用の私が居丈高にしていたら、誰も耳を傾けてくれないでしょう。お互いの技術や知識を尊重し合って、新しい技術が生まれるのです。」
彼は、全ての従業員に仲良く話し掛けている。更にすごいのは誰に対しても態度を変えず丁寧に対応していたことだ。彼が「可愛がられる人」から、次に「仕事が出来る人」最後「尊敬できる人」「上に立つ人」になるのに3年も掛からなかった。
(5)素直な人
素直な人というのは、命令に従順で疑わない人ではありません。また、喜怒哀楽の感情を表に出したり、思ったことを口走る人でもありません。
<素直な人とは>
指導やアドバイスを、自分の主観や感情にとらわれず、第三者目線で物事を見て、自分を改善できる人です
これは、中途採用者全てに求められる資質ですが、基本的なことをわかっていない人が非常に多いと言わざるを得ません。
研修期間は新しい環境で知識と技術をINPUTをする時間であり、知識も信用も無い状態で、自分の権限を超えるOUTPUTをしても意味がありません。
<研修期間で文句や意見ばかり言う人がいます>
最初は、やる気や意欲が空回りしているだけと同情していましたが、結局、何をやっても文句ばかりで成長しませんでした。
つまり、バカなのです。
バカは自分がバカであることはわかりません。
バカな中途採用者は異業種で管理職だった人が多く、口癖は「自分が納得しないとやりません」「この会社の悪い所は~」「聞いて、私の話を聞いて」
過去の栄光に追いすがり、自分の経験や考えを絶対視し、新しい環境での指導を受け入れません。
バカな中途採用者は、新しい環境で自分の意見や考えを曲げないため、成長することができないのです。
素直な人とバカは、どちらも自分の意見や考えを持っているという点では同じです。しかし、素直な人は新しい環境で自分自身の意見や考えを常に問い直し、新しい情報や意見を受け入れることで、自分の考えをより深める成長させる事ができます。
地頭の良い人は全てが素直な性格で、まずは指導されたことに感謝し、自分の主観や感情で良い悪いを考えることはありません。
「ご指導ありがとうございます」
「そういう考え方なんですね」
「このケースの優先順位の理由とは?」
「至らない所は○○という解釈でよろしいでしょうか?」
「次からは○○に注意して、○○いたします」
〇 地頭の良い人はいつも冷静
- 一度聞いたことはスムーズにアウトプットできる
- 目の前の課題をクリアすることに愚直に取り組む
地頭の良い人を育てるには?
研修で地頭も鍛えよう
<これまでの内容を整理すると>
地頭の良い人は、以下の行動ができる能力を備えていることが必要になります。
- 物事を理解するスピードが速い
- 論理的に話を組み立てることができる
- 物事の法則性を見出し、本質を見抜くことが早い
- 臨機応変に柔軟な対応ができる
- 素直に指導を聞き入れスムーズにアウトプットできる
地頭の良さが必要なら、研修で地頭力をUPさせなければなりません
OJT研修では”地頭の良さを鍛える仕掛け”を盛り込む必要があります。
以下は、私が苦労して考えた「地頭力養成研修」になります。
(1)仕事の流れ、全体像を理解させる
初日に現場で手順書を持たせ、一つの製品が完成するまでの、上流工程から下流工程の内容と流れを見るだけの時間を作り、仕事の全体像を理解させます。
※1~2日中やらせるので、会社から無駄な時間だと指摘されましたが、これをするしないで、後の習熟度に大きな差が出ます。会社も意図を理解してくれました。
(2)段取りや作業の進め方は研修者に任せる
作業の段取りや進め方を自主的に任せて、適切でない時は「違う」とだけ指摘して考え直させます。合っている時は「なぜ?そう考えたのか」を聞いて、優先順位の決め方を教えていきます。
(3)作業の意味を逐一質問する
「この作業の意味を教えて」「なぜ、このルールになってるの?」と、わかるまで質問を繰り返します。これは、物事の本質を考える癖を付けてもらうためです。
本質を理解する癖を付けると、”法則性を見出す力”が付き、習熟度が上がってミスも少なくなります。
また、作業の力量評価表の最高評価点とは「作業が確実に早くできる」だけでは無く、「作業の意味を理解して他人に教えられる」レベルがゴールになることも教えます。
(4)トラブルシューティングは「簡易なぜなぜ分析」
研修時のミスやトラブルに「簡易なぜなぜ分析」を実施しました。
<ミスやトラブルが発生した場合>
「現場・現実・現物」で、原因究明の「なぜなぜ」を繰り返し、答えさせます。
<例題:別の部品を誤発注>
論理的な思考を鍛えるトレーニングをするのが目的です。
ここで重要なことは、原因の究明は一緒にしますが、対策は自ら考えさせて実行してもらいます
※トラブル時には叱ったり、怒ってはいけません。研修期間のミスは教育担当者の責任です。人格を責めてしまうとミスを隠すようになり、重大災害を引き起こします。
これから出世したいサラリーマンが、ミスをしても自分の評価を下げない方法
(5)改善提案を出してもらう
6Sの改善 |
中途採用者の地頭を鍛える最終段階です。
研修が終盤に差し掛かった頃、
【職場改善1件以上】を課題にします
これが、地頭を鍛える取り組みの集大成です
全ての模範行動(地頭が良い人の特徴)を取らないと成果を出せません
自由にさせると収集が付かないので、以下のルールを決めました。
- 現場の3S(整理・整頓・清掃)を課題にする
- 自らが主体となって進めること
- 目的の変更は× 手段の改善をする
- 他人任せは× 協力してもらうのはOK
- 改善は上司の許可をもらってから実行すること
問題認識の力
問題意識を持たないと問題点を認識できません。
経験から導き出されるものもあれば、想像力と感性で気付くこともあります
これはセンスであり、センスは磨かなければなりません。
次に問題の背景や原因を分析し、問題の全体像を把握することが重要です。
※原因分析でデータが必要な場合は「QC7つ道具」を教えてあげるのがよいでしょう
<QC7つ道具>
アイディアが浮かばない時は、フォローが必要となり、「これ、危なくない?」「これ面倒じゃない?」「これって便利かな~」「見栄えがいいと思う?」と改善してほしい個所を聞くようにします。
改善策を考える力
解決策を考える力は一番重要です。
創造性を発揮して、新しいアイデアを出す力が必要になります。
改善策は複数考えさせます。改善提案を決める際は、以下のポイントを注意させ最適なものを選ばします。
(1)改善策が問題の原因を解決できるのか?
⇒ 改善の目的、有効性を確認する方法を明確にする
(2)改善策が実行可能かどうか?
⇒改善で4M(人、モノ、材料、方法)変更した場合、SQCD(安全、品質、コスト、納期)に及ぼす影響を考慮して実行可能か判断する
(3)改善策がコストパフォーマンスに優れているか?
⇒費用が掛かるものは、費用対効果、メリット・デメリットを説明させる
※(1)~(3)を新人が1人で考え、判断するのは不可能です。多くの上司や先輩の指導を仰ぐ必要があります。「教えてもらいに行き、必要な情報を聞きだす能力」が必要です
解決策を実行する力
改善は目標を達成するまで「PDCA(CAPD)」サイクルを回し続けなければなりません、「信念を持ってやりきる力」が求められます。
PDCAサイクルとは、計画(Plan)→実行(Do)→評価(Check)→改善(Action)の4つのステップを繰り返すことによって、目標を達成するための手法です。
教育担当者はフォローに徹して、目標を達成し成果がでたら「ありがとう。みんな喜んでるよ」と感謝します。優秀な改善は掲示板に貼りだして表彰していました。
研修期間中、指導を受けっぱなしになると意欲が低下していきます。前職で豊富な知識と経験を持っていても、長い研修期間では言われた事しかできないのでストレスが溜まってしまうのです。
「俺はもっとできるのに」「この会社では何もできない」と意欲が湧かなくなり、優秀な人が辞めてしまうケースも少なからずありました。
そんな中途採用者に職場改善でアピールできる場を与えてやると、彼らは生き生きとして仕事をしてくれるようになりました。特に職場の3Sでは、新人の方がベテランが慣れてしまって気付かない改善点を指摘してくれるので重宝します。
研修中は自分が会社に受け入れられるか不安になものです。毎日くどくど指導されると自信を失います。研修中に小さい成功体験を積まして自信を付けさせてあげるのが、今後の配属先への仕事の意欲に繋がるのです。
<会社側メリット>
⇒改善活動の推進+地頭を鍛えるトレーニング
<中途採用者側メリット>
⇒スキルUP+評価UP=意欲の向上
会社、中途採用者に双方にメリットのある仕組みを構築させました。
(6)フォローアップ・早期習得への基盤整備
教育者側も汗水流す必要があります。
教育資料の充実
研修者にメモを書かせる時間より、自分の頭で考える、覚える時間を増やせるように資料を充実させます。
作業手順書を見直して、過去のトラブル事例、核心となる作業を詳細に記述する様に手直ししたり、限度見本の充実を図りました。
作業手順書を作り込んでも、作業中に手順書は誰も見ないので、作業手順書から作業・品質ポイントを抜き出した〇×カードをハガキサイズの写真で作り、研修者に携帯させました。
教育担当者がいなくても、仕事を覚えることができる環境を整えます。
勉強会の充実
現場教育の他に、「OC7つ道具の使い方」「PDCA(CAPD)サイクルとは?」「品質管理の基礎知識」等、座学による勉強会の数を増やしました。
フィードバックの充実
研修者に毎日書かしていた日報を止めて、ノートに学んだこと、質問や悩んでいることを書かせて、教育担当者とやり取りをするようにさせます。
質問事項や悩みに関しては、即フィードバックするように心掛けました。
適材適所の提言
力量評価表とは別に、得意・不得意、性格、行動特性の記録を、次の配属先に提出し、個々の能力を最大限に発揮できる教え方と環境を提言しました。
これらの(1)~(6)の取り組みは、研修期間の大幅削減を達成し、配属先からの苦情もなくなりました。
地頭力育成研修の結果
地頭を鍛えることをOJT研修で取り入れて成果はでましたが、同時に不都合な真実を思い知らされることになります。
研修期間の短縮
※以前までの研修期間は概ね6ヶ月間
全体的に習熟スピードは1.0ヵ月上がりましたが、研修修了期間に大きな差が発生しました。
⇒「地頭のよい人」は更にスピードが上がり、できない人と1.5ヵ月の差が付く
職場の作業環境向上
中途採用者が率先して、現場の3S改善をしてくれたおかげで、作業環境は良くなりましたが、個々の成果に大きな差が出ました。
【地頭の良い人】の改善結果
⇒レイアウト変更や治具の作成等、レベルが高く成果が大きいものであり、2件以上達成している。
【できない人】の改善結果
⇒右から左に動かして表示するだけのレベルで終わり、研修期間中に終わらない人もいました。
地頭力育成研修の弊害
私の取り組みは、できない人の地頭力を育てる教育としては、僅かな効果しかありません。むしろ、地頭の良い人がより成果を上げれる、アピールができる方法となってしまいました。
⇒地頭の良い人をミエル化することには成功
地頭が良い人の真実
OJTで地頭力育成を導入後、研修期間中に会社から、契約を早期終了させられる人が続出した。
私が作成した資料や取り組みは、「できない人」を見切る材料となっていたのです。
契約終了を告げられた中途採用者は、私に涙ながらに訴えてきます。「研修は言われたことに従って、一生懸命に頑張っていました。どうしてなんでしょうか?」
私が人事課に「契約終了は、もう少し様子を見てみましょう。これから育てていきます」とお伺いを立てても決定は覆りません。
悩んで上司に相談しました。
上司「そんなに悩むな、お前はよくやってるって評判良いぞ」
私 「しかし、これは意図が違うのでは」
上司「うん?本当はわかってて、やってたんじゃないのか?」
私 「そ、それは・・」
私は薄々感じていた。
地頭が良い人は20代で形成されて、30代以上になると地頭は鍛えられない。
中途採用者で地頭が良くない人は致命傷になる
地頭力は、才能と習慣で身に付くもので、短期間では習得できない。
20代は修正が効くが、30代ではもう手遅れだ
30代で仕事の考え方や、習慣を変えることは不可能に近い
30代で地頭を鍛えていない人は、そのままで一生を過ごす
上司「うちの中途採用は、リーダーになる資質のある人を求めている。他所より高い給料と、高い待遇で募集している訳だろ?社員になってからミスマッチがわかっても、簡単に辞めさせられないんだ。そいつも活躍ができないままでは可哀そうだろ」
私 「確かにそうですが、もしかして、変わる人もいるのではないでしょうか?」
結果は途中で予測できたが、軌道修正しなかった。
地頭が良い人をミエル化したら、選んだのは配属先の責任で、文句を言えなくなるから都合が良い。
地頭が良い定義は会社によって違う。うちの会社と合わなければ、早く別の道を選んだ方がその人のためだ。
この会社では「できない人」でも、次の会社に行ったら、研修で学んだ経験を生かして成功してほしい。そのために教えられることは全て教える
ーそれが罪滅ぼしになるー
そう自分に言い聞かせていた。
しかし、研修期間で汗水流す中途採用者を見て、一生懸命に努力しているなら、いつか報われるのではないかと思うようになってきた。
上司「30代以上でも例外はある。ただし、人が本当に生まれ変われるのは、生死をさまようほど追い詰められた時や、生き恥をさらした時だ。そんな状況にならない限り人の本質は変わらない!」
私は心の中で認めたくないことを口に出す
「私は地頭の良い人ではありません。なぜ、私を教育主任にしているのですか?」
上司「それは、お前が『できない人』だからだろ。名選手が名コーチになれる訳では無い。できない人の気持ちを理解して教えられる奴が適任者だ。」
私「はい・・」
上司「本当は貧乏くじを引かされるのが嫌なだけじゃないのか?社員の育成ができる人材は重要ポストで限られている。現に出世もしているし給料も高いだろ?幸せな環境で仕事してることに感謝したらどうだ。お前の悩みは給料に反映されている、お前は会社の期待に応えている、それが全てだ!」
上司に反論ができませんでした。
地頭が良くない人は、適材適所で与えられた場で花を咲かせるしかありません
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