「雨が降るのが匂いでわかる人」と「晴れ男」が対決した話

2023/10/29

エッセイ

t f B! P L

家族で公園にお出かけしたい時

【空は曇りで降水確率20%】

雨が降るか悩むところです

嫁「予報で雨は夕方だから行けるんじゃない?」

私「雨の匂いがするからダメだよ」

嫁「雨の匂いって何よ」


雨が降るのがわかる人とは

雨が降るのがわかる人とは、天気予報を把握するだけでなく、空の様子や気温、湿度などの変化、雨の匂い、雨の音や風の音などを五感で敏感に察知して、雨が降るかどうかを予測ができる人です。

雨が降るのが五感でわかるようになるためには?

ここでは代表的なものを以下に説明していきます。

空の気象状態を目視で予測する

<例>

雨が降りそうな雲の状態

雲を見て、雲の下側が重たく灰色になっていると雨が降り出す可能性が高い

風の変化で察知する

気圧の変化で、少し強めの湿度のあるひんやりとした風が吹くと雨の確率が高い

肌の触覚・体調の変化を感じる

雨が降る前に気圧が低下すると、肌質や体調が変化する時がある

<気象の変化が関係して起こる体調不良は『気象病』と呼ばれます> 気象病とは、気圧、気温、湿度などの気象の変化によって起こるさまざまな体の不調の総称です。正式な病名ではありませんが、昔から多くの人が感じていた気候の変化による体の不調を表す言葉として近年認知され、広まっています。

気象病の主な症状は、頭痛、めまい、疲労感、関節痛、気持ちの落ち込み(うつ)、吐き気、喘息などです。気候変化の激しい、季節の変わり目や梅雨の時期、また台風が多い時期などに特に起こりやすい。

気象病の原因は、気圧・気温・湿度など気象の大きな変化によって自律神経が乱れることが原因で起こると考えられています。特に、気圧の変化による影響がとても大きいと言われていて、その中でも“雨が降る前の気圧が低下するとき”に症状が出やすいと言われています。

雨の匂いを嗅いで、雨雲が近づいているのかを予測

風で吹かれた空気の中に、

雨の匂いを探知することで、

雨雲が近づいているのか予測します

私はこれをやっています

雨が降った時には独特の匂いがします。

多くの人が少なからず「雨の匂い」を感じた経験があるのではないでしょうか。

個々によって匂いの感じ方は違いますが、以下の様な匂いになります

  • アスファルトの乾いた匂い
  • 土の匂い
  • コンクリート、石の匂い
  • 樹木や葉っぱの匂い

「雨の匂い」は確実に存在し、発生のメカニズムは科学的に解明されています。

<「雨の匂い」主な2つの要因>

1つは、雨粒が土に落ちたときに発生する「ペトリコール」と呼ばれる匂いです。

岩石や土壌に、主に植物の葉から分泌されたオイルを含んだエアロゾル(気泡)が雨粒に当たることにより空気中へ放出されます。この空気中に巻き上げられた匂いが、ペトリコールと呼ばれる雨の匂いとなるのです。

 ペトリコールの香りは、ペトリコールは、土の匂い、木の匂い、石の匂いなど、様々な匂いが混ざり合ったような、独特の匂いです。

もう1つは、雨粒や風によって、空気中の物質が舞い上がることで発生する匂いです。(例:葉っぱ、花、草木の匂い) 

その他では、雨を感じさせる匂いの成分として、O3(オゾン)もあるそうです。敏感な人は、空気中に漂う甘酸っぱい味覚を感じることができます。

※「雨上がりの匂い」もある

“雨上がりの匂い”といえるのが、濃い腐葉土のようなカビ臭いゲオスミン」と呼ばれる匂いです。こちらは土中のバクテリアなどによって発生し、雨水によって拡散します。

田舎の人達は雨を予測するのが得意

雨の森

私は田舎育ちです。

田舎の人達は雨を予測するのが得意でした。

雨を予測する子供達

山で遊んでいる時、雨の予感がすると「雨の匂いするな、もう戻ろうか」「空気甘くなってきた、やべぇ雨降るぞ」と言い合います。

田舎の子供達は主に「雨の匂い」を探知して雨を予測していました。

驚異の探知能力者「雨おばちゃん」

田舎の人達は雨を予測するのが得意でしたが、その中で、能力が桁違いに高い人が存在しました。

団地住まいをしていた時、みんなから「雨おばちゃん」と呼ばれていた人です。

雨が降る前に、団地のみんなに

「雨よー雨ー!」

と大声で叫んで知らせてくれます。

もちろん雨が降ってから叫んでいるわけではありません。

「雨おばちゃん」が叫んだ後に、団地の住人が一斉に干していた布団を、慌てて部屋に戻す光景は壮観でした。

私達は雨が降るのを予測しても、「雨が降る」のは30分後なのか、2時間先なのか?は分かりません。予測にはタイムラグが生じますが、「雨おばちゃん」は降る直前か5分前に正確に探知して知らせてくれます。

これは驚くべき能力です。

なぜなら、正確な事前予測をするには、外に出た状態で、気象状況を常に観察し続けなければなりません。

「雨おばちゃん」が雨を知らせてくれる時は、自宅のドアをドカッと蹴破って、部屋から出てきてバタバタと階段を下り、団地の中庭から叫んでいました。

室内にいながら、どうやって探知していたのでしょうか?

昭和の時代は令和の様に、ネットや雨ダス情報もありません。全くの謎です。

その能力は探知ではなく予知に近いものであり、一子相伝の秘技なのか、「雨おばちゃん」以上の能力者はおらず、後継者も現れませんでした。

「雨の匂い」は、都会っ子や令和の時代には通用しない?

都会の雨の風景

私が「雨の匂いで」雨が降ることを予測できると言っても、嫁や子供達は理解してくれません。

嫁「( ゚Д゚)ハァ?何ってんのこの人 」

子「お父ちゃんまた変なコト言ってる」

家族に詳しく説明してみると「雨の匂い」自体を認識していないことがわかりました。「それってアスファルト匂いじゃないの?ムアッとしてカビ臭いから嫌い。意識したことも無いし、そんなもの嗅ぎたいとも思わないかな」

うーん。そりゃそうか

嫁は海沿いの都会育ち、子供達はずっと都心で暮らしています。確かに都会の「雨の匂い」はアスファルトやコンクリート臭しかしません。田舎の山で嗅いだ「雨の匂い」は草木の匂いも混じっていて甘い香りがしていました。説明したところで意味は無いでしょう。

今やリアルタイムで気象状況はわかります。もはや必要もないことなのかもしれません。

「雨が降るのが匂いでわかる人」vs「晴れ男」

会社の喫煙所で、同僚と雑談をしていた時のこと

私「もうすぐ雨降るの確実やわ。仕事終わるまで雨降らんといてほしいわ」

同僚「俺は傘持ってきてない、帰る時どうしようか」

私達は空模様と同じで、どんよりとした雰囲気になっています

すこし離れたとこで、タバコを吸っていた労働組合長が話に割り込んできた。

組合長「雨は降らんから心配いらん」

私  「え?どういうことですか?」

組合長「ワシが晴れ男やからのう!」

私  「晴れ男?」

組合長「ワシは傘を持ち歩いたことはない。ワシが家に帰るまでは雨は大丈夫じゃ。あんたらも晴れ男になったら心配せんでもええぞ。ガハハハッ!」

とうとうこの日が来た

やっと戦える

私は「晴れ男」を一切信じない。

「雨が降るのが匂いでわかる人」は、科学的根拠にもとづいたスキルであるのに、迷信の類である「晴れ男」よりもメジャーになっておらず、家族には胡散臭いものとして理解を得られない。

<晴れ男は確率論だ>

天気は、気象条件によって決まるが、気象条件は常に変化している。そのため、晴れ男と言われる人は、偶然に晴れの日に外出することが多いだけだ。

また、ポジティブ思考や楽観的な人は、悪いことを忘れようとする傾向がある。パチンコや競馬をする人が「勝ったことしか言わない」のと同じで、トータルの確率は一般人とそれほど変わらはずである。

生涯で一度でもいいから、「晴れ男」と対決して勝利し、こちらが本物である証を立てたかった。

ガメラとゴジラ、新日猪木と全日ジャイアント馬場、カーネルサンダースとドナルド、無いと諦めていた夢のシチュエーションが現実となった。

組合長は高年齢にも構わずアグレッシブで、通勤にはロードバイクに乗っています。

確かに、組合長が雨具を着てロードバイクに乗っている姿を見たことはありません。

この人は本気の晴れ男だ

私は高鳴る気持ちを押さえきれません。

定時迄あと2時間。外は雨雲で薄暗く、黒いちぎれ雲が転がる様に早く流れています。雨の匂いは一段と濃くなってきており、すぐに雨が降り出す鉄板状態。おそらく1時間も持たないでしょう。

私「組合長さんは、今日は定時で帰るんですか?」

組合長「ワシはいつも定時じゃ ガハハハ」

勝負開始は定時の会社帰りだ

私は、定時に終わる様に仕事をそそくさと早く切り上げて、更衣室のソファに座って組合長が出てくるのを待っていました。

外は私の予測したどおり雨が降りだしています。

勝利の条件は、組合長と一緒に外に出た時点で雨が止んでしまったら私の負け、雨が止まなければ私の勝ちです。

待っている間は「偶然を装い、嫌味にならない様に、あくまで自然に声を掛ける」イメージトレーニングを重ねます。

しばらく待っていると組合長が更衣室から出てきました。

外は雨が止む気配はありません。99%の勝ちを確信して声を掛けました。

私「あ、あっ!お疲れ様です」

組合長「やぁ~お疲れ」

私「また会いましたね!」

組合長「お~今日は定時で帰れたんだね。よかったね~ぇ」

私「あちゃー雨降ってきましたよ」

(さりげなく言ったぞ・・どうする?)

組合長「おっと、こりゃめずらしい」

(晴れ男が負けを認めるのか?)

私「ロードバイクでしたら、雨が大変ですよね」

(晴れ男が雨に困った発言をさせないと勝っても意味がない)

組合長「しばらく待つかのう」

私「え?待つとは」

この勝負の判定は、晴れ男が更衣室から外に出た時に雨降っているかどうかであり、雨が止むのを待たれたら勝負にならない。

私「雨が止むまで待つのは大変ですよ」

組合長「いや、ワシはおしゃべり好きやから、こうやって誰かと話してたらすぐに時間が経つよ。小雨なったら帰るし、長くなりそうやったら置き傘借りて歩いてかえるわ。ワシの家歩いて5分やさかいな。ガッハハ」

"歩いて家に帰れる?" 

ちょっとまて、まて、そりゃイカサマじゃないのか?歩いて5分のところに家があるなら、雨が降ろうが降るまいがどうでもいいことになる。

私「ええぇ?家がとても近いのに、何故にロードバイクで通勤してるんすか?」

組合長「帰りにスーパーに寄ったり、仕事帰りは健康の為に河川敷でサイクリングしとる」

この勝負は私の勝ちなのか?

そもそも勝負として成り立っていたのか?

・・・・・・

勝敗の行方は関係なく、組合長さんとのやり取りはとても楽しかった。

私達は終始笑いっぱなしで話をしていた。

組合長さんはいつも陽気で、雨の日でも晴れの日でも楽しめるポジティブ思考の持ち主であり、周囲の人を明るくしてくれるような雰囲気を持っています。

彼は「晴れ男」で間違いありません

私「理想の生活ですね!お疲れ様です。ガッハハ!」

組会長「おう!気を付けて帰れよ ガッハハ!」

こうして、夢の対決の勝敗はドローとなりました。

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