大手企業に転職して憧れだったことを体験したが、想像と違っていたこと5選

2023/08/22

仕事の流儀

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大手企業の社員に憧れていたこと

15年前、私はブラック企業の町工場で品質保証をしていた。

現場で油と騒音にまみれながら、毎日深夜まで仕事をしていた。年収は300万でボーナスは無し、休日出勤は当たり前で手当ては出ない、更に同族企業で出世の見込みも無い。

お飾り課長職で残業代も支給されず、時給換算すると300円。

ただ、ただ辛いだけ。

それに比べて、視察で町工場に来る大手企業(メーカー)社員は素直に恰好良いと感じた。立ち振る舞い、話し方、全てにおいて、強い信念と情熱を感じる。

私はペコペコ頭を下げながら、いつかは、ああなりたいと憧れていた。

それから5年後、大手企業(メーカー)への転職が成功した。

憧れていたことが全て体験できるようになったが、現実は少し違っていた。

1.社員証を首からぶら下げる

大手企業に転職して最初に感動したのは、首から掛ける社員証を支給されたことだ。

私は当初、”大手企業の社員は、会社の看板を背負って仕事をする責任の証”として、社員証をぶら下げていると思っていたが、社員証の本来の用途は、想像していたものとは違っていた。

名前を書いているだけではない

社員証は入門証とタイムカードを兼用している
〇FAX、コピー機等の使用するキーカードになる
〇ゲストと社員を区別する名札

社員証は名前を書いた電子キーであった。

常時、首に社員証をぶら下げている社員などいない。入退時のセキュリティロックを解除する時、外注先(ゲスト)と社員を区別し、お互いの名前が分からない時のみ首に掛けていた。

もらった当初は嬉しくて、海外ドラマの俳優の様に社員証を常に首からかけていたが、大きな問題が起こった。首に社員証を付けていると忘れやすいのだ。

⇒家に忘れた時は悲劇である、会社に入れない

まさか。子供の頃の様に壁をよじ登って入るわけにはいかない

社員証を忘れたら顛末書、失くしたら始末書行きに

<忘れた時に受ける懲罰儀式>

  • 正門入り口のインターホンで事務所に社員証を忘れたことを報告
  • 保安課に10分説教されて、ゲストの認定証(キーカード)を発行してもらう
  • 本部長に顛末書を提出して謝罪。本部長の承認のハンコを貰うまで帰れないハンコを貰うまで帰れない

誰でも1回はするようなのだが、私は転職当初に連続で2回忘れてしまった。

本部長と話すのは面接以来のことだった。2回連続同じミスで「仕事できないヤツ」のイメージを与えてしまった。

町工場のFラン大卒の私が、大手企業の社員にしてもらったのに、本当に申し訳ない気持ちで、冷や汗を流しながら謝罪に行く。連続2回は本部長もさすがに笑って「大丈夫?ここに来て間もないけど、元気で頑張ってるの?」と心配された。

それ以来、現場で会うと「元気してる?」と声を掛けられた。不名誉だが顔と名前は憶えてくれたみたいだ。

それから猛反省し対策を考えた。

もう3度目は絶対にできない

現場の従業員は社員証をストラップから外して貴重品入れ、もしくは財布の中に入れて、必要な時に出していた。

私は部署のロッカーに置き場所を作り、出勤したらすぐに入れた。退勤時は社員証をチェーンでカバンに括り付け、チョイ置きで忘れない様に徹底した。(※財布に入れると紛失する可能性がある)

首に掛けない様に管理してから、社員証(キーカード)の忘れは無くなった。

2.出張で新幹線の指定席に座る

私はメーカー側で下請けの監査をする立場になっていた。ある日、下請け工場へ監査に行くチームに同行することになった。

地方に出張する際は、新幹線を使うように命じられる。

「これが大手企業の力だ」

新幹線に乗り込み、指定席にゆっくり腰を下ろし、居心地の良い座席で到着まで、ひと眠りしようと考えていたところ、隣の営業社員からレシピを渡された。

「今回の内部監査スケジュール表を出して下さい。事前に読み合わせしましょう」

「あっ、そ、そうですね」

「到着後、~部長と合流、指摘事項の・・」

到着する迄、スケジュール確認、質問事項の打ち合わせは続いた。新幹線を降りると直ぐに下請けの工場までタクシーで向かう。

下請け工場での監査は5時間に及んだ。終わったら即、帰社して、その日のうちに、議事録をまとめてメールを送信しなければならない。

帰りの新幹線も指定席であったが、監査中は質問と聞き取りで忙しかったのでヘトヘトになった。帰りはのんびり駅弁でも食べて、スポーツ新聞でも読もうかと考えていると、

またもや隣の営業社員から

「今回の改善の機会、是正処置内容の擦り合わせをしましょう」

営業社員はテーブルをさっと出して、手持ちの小さいノートPCを載せてカタカタし始めた。

帰りの新幹線ぐらいは駅弁食べてもええんちゃうの?

スポーツ新聞もいつもは大スポだけと、気を使って夕刊フジにしたんやで

それもアカンの?

駅弁と夕刊フジは家に持ち帰り、出張のお土産とした。

<大手企業の出張の掟>

  • 新幹線の指定席は、ビジネスするための席である
  • スケジュールは分刻みで行う。自由時間は一切ない
  • 下請けの訪問は要件が終わったらさっさと帰り、相手先の接待は絶対に受けない(※昼の弁当代も支払った)
  • 帰社したらその日のうちに、議事録をまとめて出張旅費申請するまでが仕事

自民党の女性議員の海外視察が家族旅行だったのではと指摘されて問題になった。(※私は前回の参議院選で選挙区民だったので投票したのに・・おかしいぜ、ルイ姉さん)

大手企業のサラリーマンの出張に自由時間など無い。ビール買って柿ピー食べる時間もなければ、駅弁を食べる時間も無く、許されているのは自由にトイレに行くことだけだ。

3.最先端の装置を取り扱う


大手企業の醍醐味は、時代の先端技術に触れる点だ。

1台数億もする装置の操作の研修があった。

<製造業あるある>

最先端の装置を取り扱う人は、気難しい職人肌の技術者である

「横で見てっから、言われた通り動かせ」

「事前に手順書とか、説明書は無いんですか?」

「説明書は英語だそ、お前読めんのか!」

「すいません。手順書見ないと不安で」

「俺が教えてやるって言ってんだろ!」

「手順書に細かいの全部書いてんのか?」

「すいませんでした。お願いします」

専門用語がバンバン飛び出し理解が追い付かない。先輩技術者はあらゆる計器を使いナノ単位の精密調整している。

最先端の装置は、ボタン一つで精度なデータ測定や高速作業が可能だが、微調整や前準備は手作業でやることが多い。実はこれが一番大事で、最初の設定やポイントを間違えると意味が無くなるのだ。これは経験則が大きくマニュアルを作成するのは難しい。

最先端の装置は、高度な技術者に支えられている

最先端の装置なら、操作は誰でも簡単にできる。それは大きな間違いだった。

4.年間休日120日以上、更に有休消化が義務になる

前の町工場の年間休日数は80日を切っていた。有休は使えず、病気で休んだ日はしっかり給料から減らされていた。

大手企業は年間休日は基本120日、有給は20日

有休を使うことも仕事になっており、有休を消化しないと会社から注意される。

夢のような労働環境で素晴らしいが・・

実はこの恩恵を受けるのは、役員と一般従業員だけで、現場の中間管理職(プレイングマネージャー)は試練のシステムになる。

大手製造現場は毎日24時間稼働するのが基本だ。1、2、3直体制で生産するので、従業員の休日は交代制になり、土日祝は定休にならない。

常時稼働されると、休んだ分だけ新たな仕事が溜まるのだ。

プレイングマネジャーは現場作業もしている為、繁忙期は管理仕事だけが溜まっていく。中間管理職は働き方開改革で30時間以上の残業は基本認められず、残業する管理職は仕事のできないヤツだと評価されてしまう。

業務時間はOUTPUTの時間に集中して、INPUTは業務時間外にしなければ処理できない。つまり、資料の構想、計画の立案は家で考えてメモ書きしておき、就業時は資料作成のPC入力時間、根回しする時間に徹しなければ仕事が回らなくなる。他人に仕事を振るにも、先ずは自分と同じ能力を持つ部下を育てなければならない。

処理能力は以前の職場の3倍以上を要求された

業務の簡素化とルーチン化を進めて、基盤を作っておかないと潰れるしかない。

有休申請用紙が回ってきた時は、嬉しくも悲しい複雑な気持ちで胸が痛くなる

5.従業員は全員が英語で会話する

開発、営業、一部上級職で英会話の能力は必須だが、それ以外は要求されない。会議で英語が飛び交うシーンを想像していたので安心した。それでも、全体的に英会話を習いに行ったり、趣味にしている人が多い。

<大手企業の社員は多趣味>

英会話、筋トレ、サーファー、ゴルフ、釣り、野球、スポーツ観戦、プロレス観戦、投資、車、バイク、旅行、釣り等など多彩であり、会社で上司、部下関係なく非公式のサークルを作って楽しんでいた。

優秀な人達は、休日も趣味で忙しくしており、人生を充実させている。

驚いたことは、多くの人がギャンブルを共通の趣味としていた。もちろん、大手企業の社員はギャンブルのみをするわけでは無い。特に多いのは競馬であった。

最後に

結局、どこに行っても苦労はあるが、仕事が楽しいのは大手企業である。

今までと価値観が違うなら、柔軟に適応して良いモノを取り入れていけばよい。

WBCサムライJapan

大谷翔平さんの言葉より

憧れてしまっては超えられないので、僕らは今日超えるために、トップになるために来たので。今日一日だけは彼らへの憧れを捨てて、勝つことだけ考えていきましょう

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