線路高架下通路での攻防戦がPDCAサイクルのお手本になっている

2022/05/10

仕事の流儀

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PDCAサイクルとは

PDCAサイクル

アメリカの統計学者W・エドワーズ・デミング氏が1950年代に提唱した品質管理など業務管理における継続的な改善方法です。

Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Action(改善)を進めて業務を改善します。この主言葉の頭文字をつなげたものが「PDCA」です。プロセスの最後である Action(改善)まで進むと、再び最初のプロセスのPlan(計画)に戻ります。

目標の数値や成果を達成するまで、「PDCA」継続して改善を行っていくことを「PDCAサイクルを回す」と表現されます。

PDCAサイクル例

<現状把握>

私が自転車でよく利用している線路高架下の地下通路がある。

150m程度の通路で自転車は押して歩くルールになっているが、守っている人は少なく、ルールを守らせたい市役所側 ルールを守らない市民との攻防が続いていた。

この攻防戦の解決までに至った経緯が、PDCAサイクルのお手本ともいうべきものであったので是非とも紹介したい。

高架下の自転車ルールを巡るPDCA

線路高架下の地下通路は歩行者保護のため、自転車で通行する時は降りて押すルールになっているが、守られてはいない。

「交通ルールを守って下さい」

ルール順守のアナウンスが常に流れていたが効果はなかった。

PDCAサイクル1周目

 アナウンスをお姉さんに変更 


「交通ルールを守りましょう」

「事故にあったら危険です」

アナウンスがおっさんから、お姉さんに代わって言葉遣いがソフトになったが、自転車を降りて歩く人に変化はみられなかった

PDCAサイクル2周目

 障害物を設置 

とうとう市役所は物理的な強硬手段にでた。

通路の出入り口付近に自転車避けのポールをあちこちに設置したが、市民はそんなことはお構いも無しにポールの間を颯爽と自転車ですり抜けていくため、ますます危険になってしまった。

ボランティアの警備員が出入り口に立つようになったが、1次的なもので市民の意識は変わらない。問題が大きくなり、後戻りできなくなった市役所は、更なる改善を行った。

PDCAサイクル3周目

 アナウンスを女子高生に変更 


「交通ルール 守るあなたが  カッコイイ💗」

近所の高校の女子放送部によるアナウンスであり、学生がよく利用する通学路なので効果があると思いきや・・

反抗期の男子生徒には逆効果で「守ってるのがカッコイイだってよ」と腰を上げて尻を振り回しながら自転車を爆走するようになった。

主婦、お年寄りにはガン無視されていた。

メディアの世界で万能であるはずの女子高生は、世間では全く通用しなかった。

もはやこれまで、万策尽きた

あきらめかけたその時、あるアイディアで劇的な変化が起こる。

PDCAサイクル4周目

 アナウンスを幼稚園児に変更 

「おにいさん、おねぇさん 事故に遭わないでね」「自転車は下りてください。僕たち私達からのお願いです」「〇〇幼稚園 〇〇組」

凄まじい効果であった。

年齢層を問わずみんなが自転車を降りて歩いている。自転車で幼児を乗せて二人乗りをしていた母親、お年寄りが一斉に自転車を降りる様になり、それを見た学生やサラリーマンも自転車を降りる様になった。

PDCAサイクル達成

これまでPDCAサイクルを達成した要因を考えてみましょう

幼稚園児のアナウンスで効果があった理由とは?

自転車で歩道を走ることが、小さい子供から見てどれだけ危険なのか、誤って事故を起こしてしまえばどうなるのか?守ってあげなければいけない社会的弱者の幼稚園児達の問い掛けに、自分勝手な大人たちはどう答えるべきかを求められたのです。

お願いのアナウンスしたことも重要です。これがいつもの命令口調だと効果は半減していたでしょう。また、近所の幼稚園児のアナウンスにしたことも効果的です。日本人は地域や村社会での結び付きや掟を重視することが多く、周囲の目が自分や家族に向けられていると感じるとルールを守る様になります。

設定した目標に向けて「PDCAサイクル」を回し続けた結果、「誰のためのルールなのか、何が目的か」を試行錯誤を経て明確にしたことで、市民の自発的な行動を促し、「線路高架下で自転車は降りて押すルール」を徹底することができました。

「PDCAサイクル」を回す上で、よく失敗する事例を今回の件で当てはめると「障害物を設置した」で止まることが多いのです。費用を掛けて何かをやったという行動で満足しCheck(評価)をするのを避けてしまいます。費用を掛けたものが失敗したら責任を問われるというのも理由でしょう。

設定した目標に向けての進捗具合をCheck(評価)して達成できていなければ、解決すべき問題や課題を明らかにしてサイクルを回し続けなければなりません。

今回の事例でもう一つ評価できるのは、「幼稚園児のアナウンス」の費用対効果が高いということです。仮に今回の「PDCAサイクル」を止めていた場合、ボランティア警備の手配、障害物を設置する等の余計な費用が永久的に掛かったと考えられます。

私は新入社員の教育係もやっていますが、「PDCAサイクル」を説明する際にはこの成功事例を紹介しています。

市役所には信念を持った人がいますね。私も見習わないといけません。

このアナウンスは今も続けられて、地域の安全に貢献しています。


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