家族が憧れのマイホームを持ちたいと言い出した。
さぁ 家を見に行こう!
思い立ったら行動である
ネットで不動産業者を調べ、休日に家族と一緒に不動産を巡って出した結論とは?
※この記事は一部事実に反する誇張を含めた表現にしています
※記事の内容と、特定の団体、地域、人物は一切関係ありません
日曜日の早朝から物件巡りを続ける中、そこには家族を陥れる罠が幾多にも張り巡らされていた‼
娘は小さい頃、プリキュアが好きでTVをよく観ていた。当時は年収300万のブラック企業に勤めており生活は困窮していた。
娘と一緒にTVを観ていて、プリキュアが「ルルルルル~~」と叫び出して変身する際は、チャンネルを替えていた。娘がプリキュアの高価な変身道具のおもちゃを欲しがるのを防ぐためだ。
妻から「可哀そうなことは、やめてあげて」とよく言われていた。
それから、私は大企業に転職して出世を重ねた。妻は保育士の免許を取り幼稚園で働きだした。年収はあっというまに倍増し人並みの生活が送れるようになった。
TVは4隅の画面が黄色く色褪せた液晶TVから、4K対応、衛星放送、録画機能、YouTube、アマゾンプライムセットの豪華版に代わっていった。
妻と娘達はYouTubeで猫の動画を一緒に観ている
「もちまる様かわいい~~」
【衣食住足りて礼節を知る】とはよく言ったもので、私は何も言わすに、目を細めてウンウンと幸せを噛みしめていた。
そんな生活が続く中、娘達が「猫ちゃんを飼いたい!」と言い出した。
私「うちは団地で猫を飼うのは禁止されてるから無理だよ」
妻「家を買えばいいじゃない」
ちょっと待て、それはプリキュアのおもちゃとは次元の違う買い物だ。子供達も「広い家が欲しい!欲しい!」と援護射撃をする。
妻「今の年齢で買わないと、一生家は買えないわよ」
マイホームは念願だった。
貧乏な生活が長すぎたので、そんな夢はあきらめていた。
妻と子ども達が欲しいのなら、マイホームを購入しても構わない。しかし、高い買い物なのでローンを組んで払えるのか等、不安は尽きない。
妻「今度の日曜日に予約を取って話を聞きに行こうよ」
妻は用意周到で、既にネットで物件を下調べしており、不動産の情報を集めていた。並々ならない熱意を感じる。
私「今度の日曜に家族みんなで、家を見に行こう!」
この時は、幾重にも罠が張り巡らされていた不動産業の魔界のジャングルに、足を踏み入れることになろうとは、誰も想像していなかった!
物件探し1件目
日曜日の早朝、予約した不動産屋に向かって、愛車プレマシーに家族を乗せて高速道路を軽快に走っていた。
窓を少し開けて、心地よい小春日和の風を楽しんだ。子供達はキャッキャはしゃいでいる。
事前準備もばっちりだ。
家を購入する際の注意事項、家の見方、悪徳業者に騙されない方法等、夫婦でYouTubeを何回も観て予習してきた。妻は不動産業者に質問する事項をノートにまとめて持参している。
不安は何もない。
今回は妻が選んだ物件を見せてもらうため、現地で不動産業者との待ち合わせを行った。
少し早めに着いたので、近くのコンビニに車を停めて周辺施設の確認をおこなった。周囲は閑散とした住宅地で、近くにスーパーマーケットがある。駅からは少し遠いが、病院や小学校も近く立地条件は良い。
私「環境はいい所だね」
妻「そうでしょう~ちゃんと調べたのよ」
妻「今日相談する不動産の人は、ご夫婦だけで会社をやっていて、紹介する不動産は少ないけど、地域密着型で穴場の不動産に詳しいんだって。お客様ファーストを心掛けてるから無理な接客はしないみたい。電話で連絡した時も優しそうな声だったよ。奥さんも綺麗だし。」
そういえば、私はその不動産会社のホームページを見ておらず、顔も知らない。スマホで確認したところ、ご夫婦の2ショット写真が載っていた。
これ?何かあやしくないか?
不動産の社長は、年齢は50代前半ぐらいで落ち着いた雰囲気のジェントルマンであった。
チャーリー浜に似ている
いや、おかしいと思ったところは、そこではない
奥さん若過ぎじゃない?どう見ても20代前半だ。
奥さんが若過ぎるから羨ましいとかそういうことではなくて、例えば、うちの娘が結婚しますって、親と同じぐらいのおっさん連れてきたら・・。恋愛は自由だけどそのなんというか。
何か引っかかる、嫌な予感がした。
妻は何も気にしていない。家族の前では、こんな疑問は口が裂けても言えないだろう。私は黙って歩いていたが、物件に向かう間は心の葛藤が消えず、事前の物件チェックポイントが頭から吹っ飛んでしまった。
家の前では、不動産業者の社長ことチャーリー浜さんがお出迎えしてくれた。奥さんは来てはいないようだ。
チャーリー浜「あなた○○さん、ごめんくさい」
私「車は近くのコンビニ停めましたが、車庫に入れていいですか?」
チャーリー浜「車庫付き物件ですので、大丈夫じゃ、あーりませんか」
最初の物件は集合住宅地の中古物件で3LDKの車庫付き3F建て。価格は1800万円で鉄筋15年、角地で家は三角形の形をしていた。
家族は先に物件の中に入って、私は1Fの車庫に車を入れようとしたが、車庫入れが難しいことに気付いた。車庫が小さく、車庫の前の道路も狭い。車庫の入口への道は傾斜の坂になっている。
私「これ、ミニバンを入れるのは無理ですか?」
チャーリー浜「ノンノン、前のオーナーはアールファード」
なぬ!私の車庫入れテクニックを試しているのか・・・よかろう。余裕で入れてやるわ!
道幅が狭く車1台ギリギリの幅だ、直進させた後でバックで入れるしか術はない。
ギリギリまで寄せてハンドルを命一杯に回してバックをしたところ、前の家の塀にバンパーが当たりそうになる。
車庫入れに戸惑っていると、近隣の先住民たちがゾロゾロ出てきて様子を伺っている。
なんだ、なんだ、このプレッシャーは?
衝突防止警報ブザーが室内に鳴り響く!
車を取り囲む近隣住民の冷たい視線!
塀に「追突現金 2万円いただきます」の張り紙が!
これ、前のアルファードやってるやん!ぶつけてるやん!
やばい!私もギリギリであたりそう!
私がパニックに陥り、物件の前が騒がしくなってくるとチャーリー浜さんが飛び出してきた。
「おぉ・・何たることサンタルチーア」
チャーリー浜さんの誘導のおかげで、なんとか車庫に入れたが、出ようとしたところ車庫が狭くてドアが開かない。
車庫の周囲はコンクリートで側面に扉や窓などない。車を入れると周りは暗くなって何がどうなっているのかわからない、
私「これどうやって出るんでしょうか?」
チャーリー浜は暗い車庫で少し笑いながら
「車をセンターに寄せないで、片側に寄せるのですトレビアーン」
もう一度車庫から出して補助席側にギリギリ寄せると、ドアは少し開いたが、私がギリギリ通れる隙間である。両手を上げて車と車庫の壁に潰されそうになりながら脱出した。
もう今日の仕事は終わった感がした。物件の中を観る前に、疲労困憊になってしまった。物件は3LDKだったが、間取りが狭くあまりにも窮屈な気がした。角地の三角部屋はあまりなじみがない。
それに、もうあの車庫に車を入れたくない。
今日は2件回る予定にしており、家族もこれじゃない顔をしていたので、1件目は早めに切り上げた。
物件探し2件目
2件目の物件は、1件目から5分歩いたところにあった。
チャーリー浜「君たち元気かい? 頑張ってるかい? そうかいそうかい瀬戸内海」
集合住宅地の中古物件で4LDKの車庫付き3F建て、価格は2000万円で鉄筋20年。
ここは道幅や車庫が広く愛車プレマシーもスムーズに収納できた。間取りは広く4LDKで部屋数も多い。和室やリビングも広くて魅力的であった。
しかし、あからさまにおかしい個所が3つある。
(1)風呂場の位置が変?ガラス張り?
2Fへの階段を上がると、2Fフロア正面に風呂があった。さらに風呂は、透明ガラスの引き戸になっており、階段を上っていく際に丸見えである。扉も洗面台も無い。
風呂上からで出たら足元が階段とは危なくないのか?年頃の娘が2人もいるのに風呂は丸見え。リビングで着替えろというのか?
(2)3Fのロフトが2mの高さで柵がない
子ども達は喜んで梯子を登っていた。長男は俺の秘密基地ができたとはしゃいでいたが、柵や壁が無いロフトにモノは置けないだろう。
足を踏み外したら即転落するので、下の部屋も上の部屋も命懸けだ。
(3)部屋が下水の匂いがする
築20年であちこち痛んできてるのだろうか。壁もくすんでいるし水回りも怪しい。
広さは申し分ないのだが、部屋にまとまりがなく所々傷んでいる。購入しても、リフォームしないと住めないだろう。
チャーリー浜に疑問をぶつけたら、以前のオーナーは老夫婦で、部屋の改造が趣味だったようだ。この物件は、2500万の家だが、500万のリフォーム費用を差し引いているとのこと。
「肝心なこと言い忘れてました。この家は違法建築なので、リフォームする時は市役所に届けないといけません。あ、あっ あ~~ふなき!どうもっ!」
高いのか安いのか、わからないモノか
妻の目が腐った魚の様に、みるみる澱んでいくのがわかった。
妻「あなた、ごめんね・・」
チャーリーそりゃないぜ!まさか、ここまで来て微妙な物件だけで終わらせないだろうなと思っていたら、チャーリー浜さんのメガネがキラリと光った気がした。
「奥様のご要望の中古物件で2000万のご紹介はこれで終わりますが、新築3LDKで2800万のおススメ物件がございます。お時間が許されるのであれば、ご紹介しようじゃあーりませんか。さぁ! いずこへ~~」
妻「よろしくお願いします!」
物件探し 泣きの3件目
車で5分離れたところにある工業地帯にある閑静な新築物件だった。新築らしく不動産屋のぼりが立っていた。
角地で広い車庫付きの3LDK。リビングが広いので4LDKの様な間取りだ。部屋はピカピカで新しい畳の匂いがする。
子供達や妻は目をキラキラさせて「うわ~~いいな。こんなところに住みたい!」と騒ぎだした。
新築物件に戻り3Fに上がって高い壁で囲まれた倉庫をみると、大型トラックがずらりと並んでいる。しばらく外を眺めていると物件横の道路を大型トラックが何台も通り過ぎた。
物件の窓を詳しく調べると、やはり2重の防音ガラス窓。日曜日で倉庫や鉄工所が休みだから騒音や振動がしないだけで、平日は相当ひどいのだろう。
<平日予想>
歩道には鉄骨がころがり、鉄工所からはプレスや切断による騒音や振動
休憩時間になると従業員が家の横でタバコを吸い始める
鉄工所の攻撃を避けると、大型トラックが襲ってくる
チャーリー浜さんと妻はローンの相談が終わったらしく、妻はなにやら悩んでいた。
「あなた、ウチは頭金が無いから、30年ローンを組まないと生活できないわ。30年だったら、80歳近くまでローンが残るんだけど・・どうしようか?」
それがわかっていたから、定年までに返済可能な2000万付近の中古物件にしようと事前に打ち合わせていたのに・・
妻は新築の悪魔の魅力に取りつかれ、頭が真っ白になっており、ローン地獄の底なし沼に足を踏み入れようとしていた。
中古物件等、家の値段には理由があり、何かを妥協しない事には前に進めない。
年老いてローンが払えなかったら、子どもに負担をさせるの?
団体信用生命保険に入って、負債を免除されるのをアテにするの?
40代後半で頭金なしで家を買うのは、選択肢の幅が極端に狭くなる。
私「今日のお話は持ち帰って、家族でもう一度検討してみます。」と妻が冷静になったところで、騒音やローンの話をすることにした。
せっかく来たんだから、もはやダメ元でチャーリー浜さんにお願いしてみる。
私「今回とは別で、新築で3LDKで2000万付近の物件があれば教えて下さい」
チャーリー浜さんはしばらく考えた後、持参のiPadを取り出して物件を紹介し出した。
「君たちがいて、僕がいる。新築で3LDKで2000万付近はありますが、海岸沿いの地区で辺境の新興住宅地です。周りは何もない所で小中学校は遠く交通も不便ですが、静かに住むには良い所です。トレビアーン」
私「津波が起きたら終わりですね」
チャーリー浜「馬鹿なこと言っちゃ~ あ いけないよ。そんな津波が来たらここも安全ではありません。海岸を埋め立てた住宅地なので、まだ住んでいる人が少ないだけだぁホイサッサ♪」
うーん。そういうものかもしれない。確かに、細かいことを気にしていたらどこにも住めなくなる。
その地区は私の会社から車で20分のところだ。1時間30分の通勤時間が解消される。子供達は大きくなっているので通学は大丈夫だ。妻は買い物や通勤に苦労するから文句は言うだろうが、現実的に新築を買いたいのであれば納得するだろう。余生は近くの海で釣りをして過ごすのも良いかもしれない。
選択肢の一つとして考える余地はあった。
私「今日はありがとうございました。新しく紹介していただいた物件も含めて、考えさせていただきます。」
こうして日曜日の家族の大冒険は終わった。帰りの車の中で新築物件の騒音の話をすると、妻は騙されるところだったと憤慨していた。
チャーリー浜さんは、商売人だから多少の駆け引きあったが、ちゃんとウチの状況を理解しており、無理な物件は薦めてはいない。誠心誠意対応してくれて信用できる人だったと思う。(奥さんの件は引っ掛かるが)
職場で新築購入を漏らしたら噂になった
チャーリー浜さんから聞いた、会社近くの海岸沿い地区=新興住宅地に興味があり、上司に相談してみた。
私「家の購入を考えていまして、○○地区の新築をすすめられたのですが、どう思いますか?」
上司「○○地区? 子どもがいるなら、やめといたほうがいいな」
上司は詳しい理由を言わなかったが、噂は瞬く間に部署内に広まった。休憩室でくつろいでいると、メンバーが入れ代わり立ち代わりで○○地区の情報を提供してくれる様になった。
中には他部署で「あなた 誰ですか?」という人にまで忠告された。
<〇〇地区の情報>
◆外套が全て割られているので夜中は真っ暗
◆車で通ると道路に荷物が置いてあり、人が寝ころんでいる
◆壊された自動販売機があちこちに転がっている
◆よそ者が歩いていると「オマエ、どこ中や」と絡まれる
⇒これ以外にも多数聞いたが、とても公表できる内容ではない。
モヒカンがバキーに乗っていてもおかしくないレベルだった。
今回は撤退をすることにしよう
撤退することも、また勇気なのだ!
40代後半の父親が、頭金なしで新築を買うのは無謀な挑戦だった。
それがわかったことだけでも、大きな前進である。
失敗と挫折には慣れている。失敗があるから成功ができるのだ!
常人ならば間違いなく一瞬で心が折れるような過酷な状況だが、むしろ逆境をエネルギーとして、マイホームへの熱き血潮をたぎらせている。
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