昭和のザリガニ釣りの記憶
昭和の頃、ザリガニ釣りは子供たちの一般的な娯楽です。
初夏の田んぼや用水路では外来種のアメリカザリガニが大繁殖しており、ザリガニ釣りが盛んに行われていました。
用水路でのザリガニ釣り
竹藪から切り出した竹の先端を削ってタコ糸を取り付け、餌はチクワやよっちゃんイカ、裂きイカを括り付けて仕掛けを作ります。餌につられたザリガニを網ですくっていました。
ザリガニが見える範囲でいる場合は、網で直接捕獲することも可能です。甲殻類のエビは逃げる時に後ろにバックするので、網でザリガニをすくう際は尻尾から網を入れるのがコツでしたね。
沼地や池でのザリガニ釣り
割りばしや木の枝で簡易的な竿を作り、餌は魚肉ウィンナーを使って1本釣りをします。岸に棒を立ててザリガニが釣れるのを待っていました。
捕獲したザリガニをどうするのか?
魚釣りをするちびっ子は、その場でザリガニを解体し尻尾の部分の身をフナや鯉の餌にします。普通のちびっ子は家に持ち帰り水槽で飼っていました。大きい亀やザリガニを捕獲した際は、学校に持っていきクラスの水槽で飼うこともあります。
昭和の小学校の水槽には、ちびっ子達が捕ったメダカ、亀、ザリガニで溢れていたのを覚えています。クラスのみんなで名前を付けて可愛がっていました。たまに水槽から逃げ出す亀やザリガニがいて、「ピエールが脱走した」「エリザベスが行方不明になった」と大騒動になることもあります。
家族で一緒にカニ鍋を食べていた時、昔のある思い出が蘇る
私が小学生の頃、友達でガキ大将のG君がいた。
セミの声が申し訳なく聞こえる夏の終わり、田んぼの用水路でザリガニを捕って一緒に遊んでいたときのこと。
2~3匹捕獲して、もう帰ろうかと思ったら、草むらの中に大きなザリガニを見つけた。
小学生のスクールカーストで頂点に君臨するちびっこは野球でホームランを打てる奴、ファミコンを持ってる奴、そして大きなザリガニを捕れる奴だ。
捕りにいこうと慎重に網を伸ばそうとした
・・その瞬間!
G君は私の肩を掴んで
「あれは俺がもらうから。お前はもう帰れよ」
・・・先に見つけたのは私だ。
「お前のものは俺のもの 俺のものは俺のもの」とでも言うのか。悔しくてしかたなかったが、ガキ大将のG君は体は大きく、腕力も強い。気弱で背の小さい私は従うしかなかった。
しかし、簡単に譲るのもプライドが許さない。横取りされるくらいなら、捕れないでいてほしい。「あのザリガニがいるところは、網が届かないんじゃない?飛び込めればいいけど・・・・・泥沼だし無理かなー。」
ちょっと頑張れば網が届く位置にいたのだが、ちびっこ憲法では泥沼に飛び込むのは危険で禁止されている。
そう言えばあきらめると思った。
だが、G君は用水路から迷いもなく沼地に飛び込んだ。
バッチャンーー! ズボズボズボッ!!
あっという間に腰まで沼地にめり込んだ。
G君は両手を挙げて、何か叫んでいる
何だろう。聞き取れない。
私は助けるために網を差し出し「早く、早く、掴まれと!」声を掛けたが、彼はなんと私の網を払いのけ、大粒の涙を流しながら大声で叫んだのである。
「俺はいいから! ザリガニをーー!!」
彼は男の中の男だった。
俺はバカやっちまってこのザマだ。俺はもうダメだが、せめてお前だけでもこのザリガ二を・・・・
自己犠牲に基づく真実の愛である。普段は極悪非道のジャィアンが映画では仲間のために気溢れるヒーローに変貌したり、「アナと雪の女王」でアナが自分を犠牲にして姉のエルザを守った行為に似ている。
その後、G君がどうなったか、どうやって助けられたのかは全く覚えていない。あのシーンが強烈過ぎて他に思い出せないのだ。
こんな昔話やを嫁や子供にしても仕方がない。私は無言でカニを食べた。
温故創新
私は「大きなザリガニを捕獲してスターになる」という己の欲望の為に行動していましたが、G君は純粋にザリガニとの真剣勝負がしたかったのでしょう。
私の邪な心を察して「危険を伴うハンティングにお前の様な半端な奴が手を出すな」と忠告してくれていたのです。
昭和のちびっ子とザリガニの熱き戦い
うちの子達が夢中になっているゲームの「あつまれ動物の森」にも釣りをしたり、ハンティングする画面をよく見かけるのですが、リアルの面白さや泥臭さを教えてあげたい。そこには人生に必要な哲学や思想が学べる要素が詰まっています。
貧乏人ですが無理して車を買いました。これで家族でキャンプや釣りに出かけようと思います。
愛車のマツダ プレマシー |
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