ハエトリグサを欲しがった理由とは?
長男が幼稚園の頃、初めて欲しがったものだ。
「お小遣いで買うからお願い」
手にはこれまで使わずに貯めていたお年玉袋を握りしめていた。
光合成で自らエネルギーを生成する他に、虫を捕食して養分として消化吸収できる食虫植物の一種である。葉のトゲにある蜜腺から分必された蜜で虫をおびき寄せ、2枚貝の様な葉で虫を挟んで動けなくしてから虫を溶かして消化することができる
長男は発達障害の疑いがある?
我が家の長男は少し変わった子供である。
幼稚園の頃は面談がある度に「この子は発達障害の疑いがあるので、病院で検査を受けて今後のことを相談してください」と言われた。
・左利き
・手掴みで食べていることが多い
※不器用でスプーンが使えない
・極度の偏食(肉×、牛乳×)
・先生の話を聞いていない
特に手掴みで食事をするところは、親の躾ができていないと指摘されることが多く、嫁はいつも悩んでいた。
病院へ検査をしてもらっても「グレーゾーンです。様子をみましょう」としか言われない。
私は子供が発達障害であろうがなかろうが、子供の個性に合わせて成長しやすい環境を与えてやったり、アドバイスするのが親の役目だと思っている。
園長先生からは市役所に相談して、特殊学級のある保育園に行ったほうがよいとアドバイスをもらった。
園長:「親御さんは認めたくないから、そんなこと言うんですよ。人の気持ちがわからない子は集団生活で必ずトラブルを起こしますよ。」
認める認めないは関係ない。不器用で出来ないことが多い子だから、困難があるのは納得できる。しかし、人の気持ちがわからない子と言われるのは納得が出来ない。
私:「先生の指示どおりに動けなければ、話を聞かない、人の気持ちがわからない子になるんですか?」
園長:「発達障害は他人との意思疎通に障害があって当然のことで、他人の気持ちや話の内容を理解できないから行動が遅いと考えています。また、鉛筆で書くことが苦手だから今後の学習も困難になります。」
本人が幼稚園を楽しんでいる以上、今までどおり行かせてあげたい。他人の子に危害を加えたり、集団生活を妨害する迷惑行動や異常行動を取るのならしかたがないが、いつもニコニコしておとなしく、癇癪を起こしたり暴れることはしなかった。
私:「他人に危害を与えたり暴れたりしたら、幼稚園を辞めさせます。ご迷惑をお掛けしますが、よろしくお願いします。」
嫁は面談がある度に酷いことを言われるので憂鬱になると愚痴をこぼしていた。
長男の特殊能力
長男はいつも幼い妹と仲良く遊んでくれる思いやりのある子で、特殊な学習能力を持っていた。
電車の路線図や看板を見ただけで記憶している。幼稚園でTVのテロップレベルの漢字は読めるようになっていた。算数は「ガッチンコ」と呼んで、頭でブロックを組み立てて暗算していた。
頭の中に記憶した本棚や写真があって、映像で見たり取り出したりするらしい。長男は鉛筆で字を書くことが苦手であったが、脳内で学習できるため学力は高かった。
そんな長男がハエトリグサが欲しいと言い出した訳は?
「ハエトリグサが欲しい。」
長男に理由を何回も聞いたが、「TVで見たから」としか言わなかった。
学習図鑑でしか見たことない食虫植物だ。
どこに売ってるのか皆目見当がつかない。
ネットで調べると咲くやこの花館で「虫を食べる植物展」が開催されて食虫植物が販売されてり、休日に家族で電車に乗って「虫を食べる植物展」に行った。
虫を食べる植物展2022 | 大阪の植物園-咲くやこの花館- (sakuyakonohana.jp) |
子供は体験コーナーもあり大はしゃぎで館内を周っていた。
「ハエトリグサ」の実物をみると予想以上にグロテスクである。葉にはトゲがあり、虫を待ち構えている罠が毒々しく見える。愛嬌も無くホラーに近い植物であった。
長男は葉っぱの多く付いている鉢が欲しいとお小遣いを取り出した。価格は4000円程度で意外と高く、お年玉を貯めた貯金の半分以上を失ってしまう。それでも長男は迷いもなくハエトリグサを笑顔で購入した。
嫁と妹はハエトリグサの姿を見て気味悪がっていた。
植物園の帰りの電車、家族で並んで座っている時に色んな事が頭をよぎった。
長男は少し変わっている。
初めて自分から言い出した買い物は「ハエトリグサ」本当にそれで良かったのか?
他のお友達が持っていて欲しそうにしていた妖怪ウォッチよりも大切なのか。
いつもニコニコしているが嫌なこともあるだろう。同性代の幼い子供は残酷だ。
少し変わっているからと、幼稚園で鬼ごっこの鬼ばかりやらされて泣いて帰って来たこともあった。
そんなストレスを虫を捕食する植物を見て晴らすのだろうか。
それは不健全ではないのか。
君が成長する上で必要なことなのか。
これからも興味のあることをさせてあげたいが、この子の考えていることは次第にわからなくなるのかもしれない。
そんなこと考えながら、座席でウトウトしていた時に長男が話し出した。
「これで妹ちゃんが、蚊に血を吸われなくなるね!」
疲れて寝ていた幼い妹の頭を優しく撫でた。
妹は肌が弱く、夏に蚊に刺されるとすぐに赤く腫れて寝れないと泣くことがあった。
長男は部屋に食虫植物を置いておけば蚊を食べてくれるので、妹は刺されなくて済むと思ったらしい。
私は驚いた。
親でも考えていなかったことを
妹を心配して必死に考えていた。
自分のためではなく
嫁は横でボロボロ泣き出した。
私は寝たふりをして我慢した。
その後、近況報告
長男は高校生にになる
小学校の低学年迄は幼稚園の時と同じように先生に指摘された。
小学校の高学年になって、このままではいけないと気付いたらしく、不器用だった手先を克服するために努力して、人並みにできるようになった。
嘘をつかない、人を見て態度を変えない素直な性格で友達も多い。
中学生の時に「今までみんなにお世話になったから、今度はみんなの役に立ちたいです。」とクラス委員と生徒会に立候補し、全員から拍手されたらしい。
これからも長男には多くの挫折や困難が待っていると思うが、「ハエトリグサ」の気持ちさえ忘れなければ大丈夫だろう。
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